小論文対策+コラム - 早稲田生が贈る言葉 -
- 第16回 男の恋愛 -
黄昏がやって来て、次第に電灯の明りが目立ってくる。
するとひそひそと囁き合い、チークを躍るかのように揺らめく男女の影が見える。
嗚呼 此処はブティックホテル街?
いいえ、違います。
これもまた、大学のキャンパスの見せる一つの表情。
止り木を求め羽ばたくつがいの小鳩が、大勢今日もまたキャンパスを後にする。
其処に呆然と立ち尽くす、僕。
右手には缶ビール。
左手にはロングピース。
そんな苦境から一言、
「今まさに大学に入らんとする若人よ 我と同じ轍を踏むな」
という言葉を君たちにささげよう。
「日本人は恋をしなくなった」
と、作家の石田衣良が言っていたらしいけれど、「恋をしていない」奴は、「恋のできない」奴であることが多いように思う。 こう言うと、優しい人は「恋ができない」んじゃなくて、「恋ができないと思い込んでいる」からできないんだと言ってくれる。 そしてその傾向は、男にしばしば見受けられるものだ。
男とは生来、母親の抱擁に包まれて育ち、同じく母親の抱擁を経験した父親を憎む。それも、母親の羽毛にくるまれて、 ひっそりとした憎悪で。父親は擬似的な恋敵で、母親は擬似的な恋愛対象。僕らは湿っぽい暗闇の中で、羽毛布団にくるまれて、 天井から滴り落ちる恋愛の蜜を舐め挙げてきたのだ。
と、これはひどくお行儀の良い男の成育パターン。
お行儀の良い男は度が過ぎると母の羽毛から脱することも叶わず、奈落に落ちていく。
最近の男は巧いものだよ、恋愛が。
15,16で女を覚え、17,18で女の涙の味を知る。
決して理解はしていない、ただ「覚え」、ただ「知」っているだけ。
だけどそれでもましな方。
羽毛の一本一本に、絡められ身動きもできなくなった男たちはメディアから、
「恋愛の挫折を味わいたくないんですよ、人間とは挫折しながら育っていくものなのに」
と嘲笑される。
「本当に不器用な輩だよ」
ふと、周りを見るといつもの面子がやって来た。
恋無し、されど情けあり。
情けというより甘やかし。
そして呼べば応える同志仲。
女もいぬから暇もある。
「人間は環境の動物である」
家庭から早々中途半端に飛び出していく現代の男たちは中途半端に女を知る。
手足をもがれた男は今日も、視姦の快楽に鼻腔を膨らませる。
僕の周りにいる輩は手足をもがれかかっているか、手足が筋一本で繋がっているだけのぼろぼろ人形が多い。
もしかしたら、次第に僕も……。
恋を得たくば、現在の環境を突破せよ!
僕は今しも、己に叫ぶ。
僕もまた、そろそろ一皮剥くべき時節来たり。
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